アール・ヌーヴォー誕生の背後には、「総合芸術」を調和を取りながら表現することへの希求がありました。今日この様式の作品は、チェコの多くの都市で街の一部としてすっかりとけこんでおり、19世紀から20世紀への世紀転換期の近代建築のチェコにおける精華とみなされています。宮殿やホテルだけでなく絵画や宝飾品など、今ではチェコ文化と切っても切り離せない文化的所産が持つ優雅さを実感してください。そしてプラハの市民会館など豪奢な建築物にまつわる物語を探って、それぞれの個性をご自分でも確かめてみてください。

アール・ヌーヴォー建築はひと目でわかります。華麗な外壁には、花や葉などのモチーフが有機的にからみあい、美しい貴婦人たちが描かれています。代表例としては、高級レストランを併設したプラハ市民会館、ファンタ・カフェのあるプラハ本駅の堂々とした建物などが挙げられます。プラハ城の下方に位置するビーレク邸もすぐれて個性的なアール・ヌーヴォー建築で、ライ麦畑をイメージして建てられたものです。この優雅な美術様式をじかに体験なさりたい方にお勧めなのは、アール・ヌーヴォー様式のホテルに実際に宿泊してみることです。とりわけ優美なものとしては、ヴァーツラフ広場の中心に位置するホテル・パジーシュとグランドホテル・エヴロパを挙げることができます。

アール・ヌーヴォーの巨匠の絵画を堪能する

アール・ヌーヴォーの至宝はチェコのその他の都市でも見出すことができます。ブルノにある壮麗なユルコヴィッチ邸とティヴォリ地区内の居住区域、プロスチェヨフの魅惑的な国民公会堂、フラデツ・クラーロヴェー市内のラベ川(エルベ川)左岸に建てられた建物群などを例として挙げることができます。アール・ヌーヴォーへの理解を深めたい方は、世界的に有名なチェコの画家アルフォンス・ムハ(ミュシャ)の妖艶な絵画を鑑賞するのも良いでしょう。アルフォンス・ムハは今日でもアール・ヌーヴォーを代表する画家とみなされており、わけてもプラハ中心部のパーンスカー通りにあるムハ美術館では、彼の作品をこころゆくまで鑑賞することができます。