ウィーンで出されるような本格コーヒー、チェコ料理、そしてホームメードのデザートを味わえる店は恐らくいくらでもあるでしょう。但し20世紀初頭の独特な雰囲気が楽しめる店は、カフェ・ルーブルただ一つです。当時の習慣そのままに、カフェ・ルーブルでは今でも薫り高いコーヒーを飲みながら、その日の新聞を読んだり、友人とビリヤードやチェッカー、チェスなどに興じたりすることができます。  

カフェでゲームに興じる

カフェ・ルーブルは、プラハ中心部国立劇場のすぐ近くにあります。その名称は、フランスのルーブル博物館にちなんだものですが、今日の内装、そして全体的様相は、どちらかと言うとウィーン・タイプの喫茶店を彷彿させます。美味しいコーヒーのほか、ここでは朝食もサーブされていますが、やはりランチあるいは午後のコーヒータイムにチェス盤や新聞を前にくつろぐのが、ここでは定番と言えましょう。新聞は、ドイツのもの、英国のものも用意されています。カフェ・ルーブルに欠けているものがあるとすれば、それはwi-fiです。フェースブックなどネットサーフィンする代わりに、友人との会話を楽しみ、20世紀前半の雰囲気に思いっきり浸ってみてください。
 

カフカやアインシュタインが通った場所

カフェ・ルーブルは、約50年もの歳月と全面改装工事を経て、1992年に再びオープンしました。1948年2月、旧チェコスロバキアで共産党が政権を掌握した後、カフェの内装は全て朽ち果ててしまったのです。しかしながら今日ここには喫茶店、レストラン、ビリヤード台付きケーキ・ショップ、そして夏季限定のサマー・テラスも全て再現されています。カフェ・ルーブルのある建物は、1902年に建てられたもので、「ルーブル・パレス」と呼ばれていました。建物内2階に造られた店が「ルーブル」と銘打つことは、既にこの時点で定められていたことだったのです。カフェ・ルーブルには開業当初から、世界的に有名な人物が顧客として通っていました。例えばドイツの作家オットー・ピック、フランツ・ヴェルヘル、フランツ・カフカなどがその代表例ですが、加えてアルベルト・アインシュタインも、プラハで教鞭をとっていた時代にこのカフェの常連となっています。