ジーンズと法王のための錦織
北東ボヘミアのイエセニーキ山麓にある三つの町、リーマジョフ、クルノフ、ブルンタールは世界の織物の歴史に刻まれています。この地域をシレジア・マンチェスターと呼んでいた時期さえあるのです。リーマジョフでは絹のネクタイを製造していましたし、現在もキリスト教のカズラも含め、ハイクオリティな多くの錦織製品がここから輸出されています。当地の製品の質は、法王フランシスコに錦織の書類フォルダーを献上したHedva Český Brokát (へドヴァ・チェスキー・ブロカート)社の展示をご覧になればおわかりいただけるでしょう。
Hedva Český Brokát
クルノフを訪れたら是非、魅力あるフレミフ邸を訪れてください。その内部には繊維製品に特化した博物館が置かれています
フレミフ邸
現在、ブルンタール地域中心部は、一級品を誇りにしています。幾人かの歴史家によれば、昔、当地の織物工場で偶然生産された帆布がウイーンの展示会からカリフォルニアのリーヴァイ・ストラウスの手に渡ったことで、世界的に旋風を巻き起こしたジーンズの1本目が生まれたというのです!
ブルンタール
藍染:生地を輝かせたいなら
布を織ったら、その布を染色し装飾を施します。ヨーロッパでは歴史の中で布の染めと装飾の方法として藍染が生まれました。この伝統的手法はUNESCOの指定を受け、チェコ共和国も含む中欧数か国の藍染が無形文化遺産となっています。現在、ヨーロッパで経営されている染色工房はたったの6件しかありません!もし藍染の技法を実際にご覧になりたいなら、チェコでは2か所の家族経営の工房を訪ねることができます。オレシュニツェのModrotisk Danzingerと南モラビアのストラージュニツェにあるArimoです。両工房は一般向けにデモンストレーションを行っており、最古のプリント方法を目にすることができます。
Modrotisk Danzinger
ブルノ:モラビア・マンチェスター
モラビアの首都ブルノは19世紀まで、当時のオーストリア・ハンガリー帝国にとって重要な繊維産業の中心地でした。町ではまさにいたるところで繊維を生産しており、製品はここから世界へ輸出されてゆきました。町とその周辺は、モラビア・マンチェスターとよばれていたほどです。当時の繊維産業ブームを今日でも思い起こさせるのは、工場所有者であったユダヤ系家族の豪華な邸宅でしょう。ここへは特別な見学コースを利用して入場することが可能です。最も有名なのはUNESCOにも登録されているトゥーゲントハット邸です。他にもレーウ・ビールやシュティアッスニなどの邸宅があります。
スティアスニ・ヴィラ
ノヴィー・イイチーン:チャーチルの帽子
チェコ北東部の町は、帽子生産で世界的に有名です。当地のビジターセンターでは、帽子の生産方法を皆さんにご紹介しています。驚くような帽子の製造プロセスを、楽しく学ぶことができるようになっています。インタラクティヴな見学コースを終えたら、当地の城館にある帽子の展示を訪れて戴くのがよいでしょう。ここは貴重な所蔵品を自慢にしています。サラエボで殺害されたオーストリア皇太子フェルディナンドの帽子だけでなく、第一チェコスロバキア共和国の大統領であったマサリクの帽子にも出会えます。ノヴィー・イイチーンでイギリス首相、チャーチルの帽子が作られたこともよく知られています。
そして、ノヴィー・イイチーンの帽子製造の伝統は現在も続いているのです!ここでファッション性の高い製品を製造している、世界で最大かつ最も有名な帽子メーカーがTONAKです。この会社の歴史は1799年にまでさかのぼります。当時、ヒュッケルという人がベスキディ山脈の山麓に帽子製造工場を設立し、それが数世紀を経て帽子帝国へと成長しました。国営となるまで工場は一家の名前ヒュッケルを名乗っていましたが、その後TONAKという新名称を与えられました。TONAKの帽子は、ノヴィー・イイチーンだけでなく、プラハにあるフラッグ・ショップでも購入できます。
ブランカ・マトラギ:世界のファッションの象徴がプラハで展示!
プラハの市民会館では2024年1月まで、最も有名なチェコ人モードデザイナー、ブランカ・マトラギの作品展覧会を開催しています。市民会館が持つセセッション様式の紛れない魅力と、高級なオートクチュールを組み合わせたユニークな展覧会は、チェコのファッション・アイコンのキャリアをマッピングするものです。彼女の作品は、世界でも特に裕福な女性たちに愛されています。流れるようなドレスとクリスタルの輝きがお好きなら、是非この展覧会を訪れてください。この素晴らしい一品をあなたのワードローブに加えたいとお考えなら、プラハ旧市街にあるブランカ・マトラギのブティックを訪れることをお勧めします。