年越え後しばらくして訪れる謝肉祭は歓喜と享楽の時、人々がこの時とばかり羽目を外して楽しむ時です。チェコではこの時期には仮装行列、そして脂ののった肉とスイーツたっぷりの祝宴がつきもの。謝肉祭の起源はキリスト教伝道前の時代とされていますが、今日では東方三博士の日(1月6日)後、灰の水曜日(復活祭の6週間前)までの時期と定められています。私たちの遠い祖先は、これを太陽に捧げ、子宝、そして精力を祈願する祭りととらえていました。春の訪れとともに、徐々に日が長くなっていくことを歓迎する時期だったのです。その後キリスト教の到来とともに、謝肉祭はイースターの断食の前に訪れる飽食の祝祭となりました。ここではチェコで謝肉祭が体験できる場所と、その食事の例をご紹介しましょう。
ユネスコ世界遺産の謝肉祭仮装行列
上述のように、ボヘミア、モラヴィアの謝肉祭は、音楽を奏で、踊りながら町や村を練り歩く仮装行列と深く結びついています。この仮装行列が今も昔と全く同じ形で続いているのが東ボヘミアのフリネツコ地方、特にハムリ、ストゥドニツェ、ヴォルトヴァー、そしてブラトノです。仮面、仮装の特徴や形態も100年前と全く変わっておらず、フリネツコの仮装行列はこうしたオリジナリティが評価され、ユネスコ無形文化遺産に登録されたのです。フリンスコ市のベトレームと呼ばれる史跡保護区には、謝肉祭をテーマとした博物館もあります。謝肉祭体験の旅
謝肉祭の祝いに参加してみたいという方のために、今年もいくつかその機会が設けられています。例えばプラハのレトナー謝肉祭。仮面のパレードは1月20日12:30にプラハ7区のストロスマイヤー広場で始まり、音楽、演劇、ダンス、そして何よりも伝統的な仮面が披露される。カーニバルでは、国立技術博物館や国立農業博物館でのプログラムも行われる。しかし、それだけではありません。仮面をかぶって来場すると、これらの博物館の入場料が無料になります!同様に、美しい歴史的な町を背景に謝肉祭が開催される場所としては、南ボヘミアのチェスキー・クルムロフも挙げられます。もちろん、音楽、歌、美味しい食事は伝統的なマルディグラのお祭りの一部です。 1 月 27 日には、Pivovarská レストランで豚肉料理を味わうことができます。 クルムロフのカーニバルは2月13日の仮面パレードで幕を閉じる。
もっと庶民的なもの、昔ながらの正真正銘農村の祭りの方がお好みという方には、東ボヘミアのヴェセリー・コペッツ野外博物館がお勧め。当地の伝統の謝肉祭仮装パレードは、ユネスコ世界遺産に登録されています。ここでは1月27日に、フォークロア・グループが館内を練り歩き、数百年前の習慣を正確に再現します。またここからそれほど遠くないところ、東ボヘミアのハムリ村の仮装行列も同様に、ユネスコ世界遺産に登録されています。ハムリは、古いチェコの仮装の伝統をそのまま残す貴重な村の1つですが、ここでは仮装行列は1月27日に行われます。行列の形態は世代から世代へと自然に受け継がれてきたもので、仮装もまたその古い伝統をそのまま残しています。パレードでは女性や子供はほとんど見られず、仮装しているのは男性のみというのも、当地の特徴となっています。
一方モラヴィアでは、例えばオロモウツで1月27日に謝肉祭の市場が開催され、ザビヤチカなどの謝肉祭料理、モラヴィアのフォークロア・グループのパフォーマンスのほか、天候に恵まれれば氷の彫刻もお楽しみいただけます。もちろん謝肉祭の仮装行列もご覧いただけます。あるいはロジュノフ・ポド・ラドホシュチェムの野外博物館では、2月3日の土曜日に「木の町」と呼ばれるエリアで謝肉祭の習慣を紹介するプログラムが開催されます。
伝統の食事
かつて謝肉祭のメイン・イベントは、謝肉祭の日曜日、つまり灰の水曜日前の日曜日に開始されていました。この日親戚中が集まって、盛大な食事会が行われていたのです。食事の内容はダイエットとはほど遠いもので、食卓にはたっぷり脂ののった肉が大量に並べられ、また甘いデザートも欠かせませんでした。当時は誰もが復活祭前の断食開始前に、盛大な祝宴、歌、踊り、そしてもちろん豊富な食べ物、飲み物を貪欲に享受していたのです。ザビヤチカ料理
謝肉祭の時期にザビヤチカが多くなされるのは決して偶然ではありません。この伝統行事はモラヴィアの農村では現在も続けられており、家族・親戚、あるいは友人が集まり、1日で豚1頭をつぶして加工します。少し前までは人々が1年間かけて飼育した豚を、ザビヤチカの当日に食肉処理のプロが中庭で屠殺するのが普通でしたが、最近は豚の飼育業者から既に屠殺されたものを購入するという、より簡単なスタイルが主流となっています。その後1日かけて頭から尾に至るまでの肉を処理し、イトルニツェ、イェリートカと呼ばれる腸詰め、オヴァル(ゆでた肉)、トラチェンカ(フロマージュ・ド・テット)、シュクヴァルキ(ポーク・スクラッチング)、ザビヤチカ・スープまたはグラーシュなどを完成させます。その際どんな部位も無駄にせず、肉を全て使い切るのが決まりとなっています。昔は冷蔵庫や冷凍庫がなかったため、寒さの厳しいこの時期はザビヤチカに理想的で、屠殺職人は大忙しでした。また体を温めるためのビール、あるいは自家製蒸留酒(主としてプラム酒)もザビヤチカの1日には欠かせません。ザビヤチカ料理は、田舎の家庭料理ですが、チェコ伝統料理を専門とするレストランでもご賞味いただけます。レストランのザビヤチカ・メニューは、通常豚の出し汁を用いたスープ、トラチェンカ、イトルニツェ、イェリートカ、プレイト(ブラッド・ソーセージ)、膝肉のグリル、あるいはザビヤチカ・グラーシュなどから成っています。
うちトラチェンカは、ビアホールなどで年中オファーされています。この典型的なザビヤチカ料理には、豚のあらゆる部位の肉が使用されており、レバー、タン、皮、あるいは足の肉も含まれています。これらの肉を細かく切って、ゼリー寄せをして完成です。通常玉ねぎを添え、酢をかけて食します。
謝肉祭のスイーツ
謝肉祭の食卓には、様々なスイーツも欠かせません。中でも最も典型的なものは、バターで揚げたチェコ風ドーナツです。小麦粉をベースとして甘味を加えた生地を発酵させ、これに自家製のジャムを入れて揚げ、仕上げに砂糖をまぶします。地方によってはボジー・ミロスチ(神の慈悲の意)と呼ばれるクッキー、ヴドルキ(ドーナツ)、細かく砕いたクルミを包み込んだスラトケー・ロフリーチキ(甘いミニ角型パンの意)、あるいはカッテージチーズ、けしの実、またはプラム・ジャム入りのパンケーキなどが振舞われるところもあります。ボジー・ミロスチ – レシピ
この伝統的なソフト・クッキーは、私たちの祖母、曾祖母の時代によく作られていたもので、現在は主としてモラヴィアの食卓でオファーされています。とても美味しいスイーツですので、是非貴方もトライしてみてください。用意するもの:小麦粉(細挽き粉)300 g、塩 少々、バター 50 g、ラード20 g、砂糖(上白糖)40 g、卵白3個、レモン汁大匙(スープ用スプーン)2杯、レモン1個分の皮、サワークリーム大匙7杯、ラム酒大匙1杯、揚げ物用に溶かしたバター
①小麦粉、バター、ラードを混ぜ合わせます。②サワークリームに砂糖、塩少々、レモン汁大匙2杯、レモンの皮、ラム酒大匙1杯、卵白を加えて混ぜ、これを①に加えます。③滑らかになるまでこねて出来上がった生地を、アルミホイルで包み、冷蔵庫に入れて1時間寝かせます。④生地を取り出して、3mm程度の薄さに伸ばします。⑤長方形に切り分け、それぞれ中央部分に十字架の切り込みを入れます。⑥深型の鍋(フライパン)でバターを溶かし、⑤を両面がきつね色になるまで揚げます。⑦鍋から取り出した後は紙ナプキンの上に置いて余計な油分をとります。⑧1分後ヴァニラシュガーをまぶして出来上がりです。