今回は、通常ラジオからはあまり聞かれない、そんな曲と出会える音楽祭をご紹介いたしましょう。これらの曲は、いずれも数百年も前に書かれた珠玉の音楽作品ばかり。ここではこのいわゆる古楽と呼ばれる中世、ルネサンス、そしてバロック時代の音楽が楽しめる場所、そして過去へのタイムスリップの旅が体験できる音楽祭をご教示いたします。
古楽のユニークな魅力
古楽器の音と、それが奏でるハーモニーは、現代人の私達にはいささかエキゾチックに聞こえます。リラ、リュート、あるいは中世の笛などの楽器は、一部の愛好家の間でのみ受け継がれており、その演奏が聴けるところは今ではごく限られています。こうした古楽を演奏する貴重な楽団は、私達にかけがいのない、ユニークな芸術体験を提供してくれます。うちルネサンス音楽を聴くことができるのは、特別な音楽祭やこの時代をテーマとした祝祭行事にほぼ限られています。これに対して、バロック音楽に関しては、その演奏を専門とする楽団が存在しています。その代表例としては、夏の古楽の祭典での活躍で知られる、プラハの「 コレギウム・マリアヌム 」、あるいはズノイモ音楽祭の常連となっているチェコ・アンサンブル・バロックなどが挙げられます。バロックのコンサート、オペラなどは、国内の城館に現在もいくつか保存されているバロック劇場における公演でも、お楽しみいただけます。5弁の薔薇祭り(6月17~19日)
騎士の馬上槍試合と美しい貴婦人の時代にタイムスリップ6月半ばの週末、南ボヘミアのチェスキー・クルムロフは、伝統のルネサンス祭り一色に染まります。ここでは市内10カ所の舞台・200のプログラムにて、主としてゴシック、ルネサンス時代の音楽、演劇、剣術、ダンスなどをご堪能いただけます。またこのほか、大道芸人の曲芸、火を用いたパフォーマンスや、大人・子供向けの昔のゲーム、城内あるいは街中で開かれる伝統工芸市、そして中世料理の試食も、プログラムに組み込まれています。さらに歴史的な創作プログラム、ヴルタヴァ川を流れるフロート筏、そして城の上空に打ち上げられる花火などもお楽しみいただけます。各プログラムは、時代コスチュームに身を包んだ地元のアーチストやグループ、あるいは外国のゲストが参加して行われます。
夏の古楽の祭典(7月17日~8月4日)
古楽ファンのためのフェスティバル夏の古楽の祭典は、プラハ最大にして、最も長く続いている古楽フェスティバルです。このイベントのため、チェコは毎年外国から、オリジナル、あるいは複製の古楽器を演奏する、一流のアーチストを迎え入れ、現代のチェコ、あるいは時として世界で初めて演奏される作品を紹介しています。このフェスティバルは、バロック演劇そしてダンスにまで触れている点で、更にユニークな存在となっています。さらにフェスティバルの特長の1つとして、美しい建築とそのスタイルにマッチする音楽との融合も挙げることができます。ここではコンサート、公演がストラホフ修道院、ストロモフカのシュレフトフカ内バロック・ホール、トロヤ城、あるいは教会など、プラハ珠玉のバロック建築物の中で実現されているのです。
リトミシュルのバロック伝統の日(8月14~18日)
21世紀に生きるバロック音楽の精神フェスティバル「リトミシュルのバロック伝統の日」は、現代人にバロック音楽を紹介し、バロック音楽がもたらす精神的意義を再認識させることを目的として開始されたユニークなプロジェクト。東ボヘミアの美しい町・リトミシュルでコンサート、レクチャー、あるいはバロック時代当時のスタイルで行われるミサに参列することにより、誰もがバロック時代へのタイムスリップを体験することができるのです。
テアトルム・ククス(8月24~28日)
バロックの過去と現代とを結ぶマルチジャンル・フェスティバル「テアトルム・ククス」は、欧州の音楽、演劇、芸術の中心としての東ボヘミア・ククスの伝統を今に伝えるフェスティバル。その主な目的は、バロックと現代とは共通点が多々あること、そしてバロックが300年を経た今でも人々の心を惹きつけるものであるという事実を認識させることにあります。フェスティバルは、ククスのエリア内、そしてその周辺にてバロック、およびバロックにインスピレーションを受けた芸術を紹介します。
バロック芸術フェスティバル(9月16~18日)
バロック芸術を完璧に再現!南ボヘミアのチェスキー・クルムロフのフェスティバルでは、できる限りオリジナルに近い形で再現したバロック音楽をお楽しみいただけます。ここでは毎年、チェスキー・クルムロフ城内オリジナルのバロック劇場を舞台に、現代におけるバロック・オペラの世界初演を、舞台背景からコスチューム、そして蝋燭という照明にいたるまで、全てバロック当時のままでお届けしています。