アドルフ・ロース(1870年 ~1933年)は、20世紀前半における中欧最大の建築家とされています。1920年代末から30年代初頭にかけてロースは西ボヘミアの都市・プルゼニュにしばしば滞在していましたが、この間「ブルーメルの家」(所在地:Husova 58)と呼ばれる建物、および13戸のフラット内部の改装を手掛けました。これらは専門家の間では、プルゼニュのみならず、欧州全体の20世紀建築作品の中で最も優れたものの一つと評価されています。ここではその中から、3つの解説付き見学コースでご覧いただける傑作をいくつかご紹介いたしましょう。
1. クラウス家、ヴォーグル家
住所:Bendova 10、および Klatovská 12第1のコースでは、ロースが内装を手掛けたフラット2軒をご覧いただけます。この建築学の散歩、最初の見学箇所は、ベンドヴァ通り10番地のクラウス家です。その美しいサロンは、マホガニーの板張りの天井が特徴です。また食堂は、向かい合った壁が鏡張りのため、空間が限りなく広がって見えます。深緑色の葉脈入り大理石の壁を持つ部屋は、非常に神秘的な印象を与えます。更に寝室は、作り付けのオリジナルのタンス、化粧台が置かれ、実用的な内装となっています。ここでクラウス家をあとにし、ガイドに付いてほんの400メートルほど進むと、クラトフスカー通り12番地のヨゼフ・ヴォーグル博士の家に到着します。ここでは作り付けの家具、そして木製あるいはトラバーチン模様の壁を持つ食堂付きサロンをご覧いただけます。
2. ブルーメルの家
住所:Husova 582番目の見学コースでは、ゆったりと広い二世代住宅となっているブルーメルの家をご紹介いたします。完成当時の家具・設備がいくつか保存されているこの家は、プルゼニュ市内にみられるロースの作品中最も美しいものに属しています。改装を担当したロースは、建物全体をモダンな生活空間に作り変えました。所要時間約1時間の見学コースは、ゲーテのヴァイマルの家を模した階段ホールから始まり、ここから廊下、食事準備室、そして作り付けの家具が残されている寝室へと続きます。寝室にはさくら材のクローゼットがありますが、その裏には広い浴室が隠されています。また寝室から小さい廊下を戻っていったところには居間がありますが、その暖炉とテラスは圧巻です。
3. セムレルの邸宅
住所:Klatovská 110三番目の見学コースは、セムレルの邸宅と呼ばれる建物の一部をお見せするものです。ロースの空間概念の中で最も有名なものは「ラウムプラン」と呼ばれるものですが、プルゼニュでこれが実現されている建物は、セムレルの邸宅ただ一つです。ここでは内装の設計は、ロースの弟子であり、協力者でもあったハインリッヒ・クルカが担当しましたが、おそらくロースのコンセプトがそのベースになっていたと考えられています。現在見学可能となっているのは、広大な居間、クロークルーム、食堂、キッチンなどで、その内装は大部分が完成当時のものがそのまま残されていますが、部分的に修復作業を経た箇所も見られます。
見学ツアー実施日
4月~10月:木、土、日 時間は事前予約の際に指定
11月~3月:木、土 時間は事前予約の際に指定