ロジュノフ・ポド・ラドホシュチェムのワラキア野外博物館
モラヴィア・
ベスキディ山地の町、
ロジュノフ・ポド・ラドホシュチェムに位置する
ワラキア野外博物館は、1925年創設の、
中央ヨーロッパ最古の野外博物館です。ここでは敷地がテーマごとに3ヵ所に分かれていますが、その1つ、「
木の町」は博物館内で最も古く、また最も人気のある部分で、19世紀半ば~20世紀初頭の時代における、小さな町に住む人々の生活様式を紹介しています。また「
水車の谷」は逆に最も新しい部分で、ここでは現在も機能している
水の動力を利用した作業建築物、繊維の縮充所、製粉所、あるいは製材所が、19世紀初頭、ロジュノフ・ポド・ラドホシュチェムの近郊の町、ヴェルケー・カルロヴィツェに存在していた様子がほぼそのまま忠実に再現されてされています。3番目の「
ワラキアの村落」は、最大の敷地を占めており、起伏に富んだ
ベスキディ山地の麓の村を彷彿させる土地に、
農家、家畜小屋、
水車、鍛冶場などが点在しています。住居の内部は、19世紀半ば当時の、様々な社会層の生活様式を反映しています。この野外博物館では、英語あるいはドイツ語のガイド付きの見学コースも組まれており、また一年を通じて
昔の農業その他各種作業方法を再現するプログラムが実施されています。見学コースでは昔の収穫の様子を物語る畑や庭、果物の木などはもちろん、家畜、羊の群れなども目にすることができます。ここでは、既に
忘れられかけている伝統の技術や民俗芸術、昔の習慣の復元が重視されており、いにしえの社会生活、商売、そして娯楽の様子が丹念に再現されています。そのため様々な行事も行われていますが、その代表的なものとしては、毎年6月半ばに開催されるチェコ伝統の夏至の祝い「
聖ヨハネ(ヤン)の前夜祭」、そして7月初旬に開催される国際フォークロア・フェスティバル「
ロジュノフ祭」が挙げられます。
コウジム民俗建築博物
中央ボヘミア地方、
プラハから車で30分ほど行ったところにある
コウジムと呼ばれる町にも、
野外博物館がありますが、ここは中央ボヘミアと東ボヘミアの建築遺産に特化した博物館となっています。敷地内には
昔の内装がそのまま保存された、貴重な家が14軒立っているほか、付属の建物や
小さな建築作品も見られますが、中でも歴史的に最も価値の高い建物は、17世紀に建てられた農家です。ここでは、もともと果樹園であった土地に、昔の村を再現する形で建物が配置されているため、非常に独特な雰囲気が感じられます。現在、敷地全体の修復および現代の文化財保存条件に適合させる作業が行われており、作業後はチェコ農村博物館となる予定で、野外博物館全体が、典型的な近代初期の中央ボヘミアあるいは東ボヘミアの村の様子を呈するよう、徐々に建物が配置されつつあります。当野外博物館では、外国人見学者用に英語あるいはドイツ語のテキストが用意されています。団体に対しては英語のガイド付き見学も提供されていますが、事前にメールか電話で予約する必要があります。
ヴェセリー・コペッツ野外博物館
次にご紹介するのは、
ヴィソチナ地方、
パルドビツェの近くに位置する
ヴェセリー・コペッツ野外博物館です。ここではそこここに点在するおよそ30軒の建物が、
総体的に1つの集落を成しており、主として19世紀前半~20世紀半ばにおけるヴィソチナ地方の小作農の仕事と生活の様子が再現されています。農家の建物と小さな農村建築物のほか、フルジムカ川の岸辺には、水力を利用した作業用の建物もいくつか見られます。中でも最も貴重なものは、製粉用の水車ですが、水はこの他製油にも利用されていました。ここにはまた1680年に建てられた
独特な多角形(14角形)の農家、あるいは昔の旅する人形遣い用トレーラーもありますが、その中には古い農業用機器が展示されています。ここでもご見学の際には、英語、ドイツ語のテキストが提供されていますが、2021年7月には、各展示品に英語の説明書きが加わり、更にQRコードを用いたより詳細な情報提供のシステムも確立される予定です。また事前に予約すれば、英語あるいはドイツ語のガイド付き見学もアレンジ可能です。ヴェセリー・コペッツ野外博物館では、定期的にイベントが開催されていますが、中でも特に人気を呼んでいるのが、7月半ばに開催される
ヴェセリー・コペッツ工芸市、そしてかつて9月初旬に農村部で毎年開かれていた、食べ物の出店や様々な娯楽が楽しめる
ケルメス(縁日)です。
ストラージュニツェの南東モラヴィア農村博物館
ストラージュニツェ野外博物館は、
モラヴィア南部、
ブルノから更に南東に行ったところにあります。ここでも、周辺の村から運ばれてきた民俗建築遺産が、昔の典型的な農村を呈する形で並べられています。ここにはまた、水車小屋、葡萄園、そして干し草地帯もあります。文化財保護監督官、あるいは復元技術者により全64軒の建物が持ち込まれ、人工的に造成され、当時の環境復元のため緑が植えられたこの土地に並べられました。建物の中には展示物が置かれているものもあり、見学者はそこで南東モラヴィアの
山間地方あるいは
低地地方における当時の人々の生活様式を知ることができます。一方葡萄園エリアは、付属の建物と設備、そして太古の昔から現在に至るまでの葡萄栽培の様子を示した葡萄園とから構成されています。ここでも外国人見学者用に英語あるいはドイツ語のテキストが用意されており、また団体の場合には、事前に予約すれば、有料の英語ガイド付き見学をアレンジすることも可能です。ストラージュニツェ野外博物館でもまた、例えば「
5月柱立て」や「
ドジーンキ」と呼ばれるスラヴの収穫祭など、定期的に民俗祭が開催されています。また毎年6月末には、ストラージュニツェ野外博物館の敷地全体が、
ストラージュニツェ国際フォークロア・フェスティバルの舞台に早変わりします。
ハノヴィツェ野外博物館
ハノヴィツェ野外博物館は、
西ボヘミア地方、
プルゼニュから車で南に数十分行ったところにあります。この野外博物館は、南西ボヘミア地域の大小様々な建築物を集め、こうした
民俗建築物を保護するための展示スペースとして機能しています。この野外博物館は、チェコ国内最小のもので、建物の数は全部で20軒ほどに限られています。但しここには、16世紀から17世紀にかけて建てられた家畜小屋という、民俗建築物としては最古の部類に属する貴重な建物が存在します。博物館は絶え間なく拡張されつつあり、この地方において既にその機能を失った古い民俗建築物、あるいはその保存・保護のための資金、あるいは意志を持たない所有者に属する建物などを常に探し求めています。ハノヴィツェ野外博物館は、全エリアを誰でも自由に見学することができ、昔の
シュマヴァ山麓の生活様式について知ることができます。希望者には、英語、ドイツ語のテキストが提供されますし、事前に英語のガイドを予約することも可能です。