チェコの鉄道 - 歴史、豆知識そして列車の旅
チェコはそのサイズでは欧州で中間に位置する国。大きくはありませんが、ミニ国家というわけでもありません。但しこと鉄道に関しては、鉄道網の規模と密度という点で欧州でも指折りの存在。79,000 km2の国土に、全長10,000 kmの線路が走っているのです。そのためチェコでは、どこにでも列車で行けると言っても過言ではありません。ここではそんなチェコの鉄道の歴史、そしてこれにまつわる話題をご紹介いたしましょう。

馬車鉄道から蒸気機関車へ 

この時代、チェコは先駆け的存在にありました。南ボヘミアチェスケー・ブジェヨヴィツェと、オーストリアのリンツ(当時は国境で隔てられていませんでした)の間に、欧州大陸初の鉄道が敷かれたのです。運行開始されたのは1828のことでした。その後徐々に鉄道が発展していき、1839年には、今日のチェコ国土内において蒸気機関車第1号が登場しました。フェルディナンド皇帝北部鉄道と名付けられた線路の、ウィーンとブジェツラフを結ぶ区間は183966日に開通しています。その後1841年にはブジェツラフからプシェロフの区間が開通、その後オロモウツまで延長され、ここで国際鉄道網に連結しました。
一方プラハはどうかというと、この町に最初の列車が登場したのは、1845820のことで、このとき城壁の間を抜けて、建てられたばかりのプラハ駅の構内に到着しました。これは現在のプラハ・マサリク駅で、列車第1号の到着から170年以上もの間、駅の建物は(ほぼ当時のまま外観を保ちつつ)鉄道の劇的な技術進歩をその間近から観察し続けてきたのです。

蒸気の時代終結 

ノスタルジックな鉄道ファン、あるいは子供向けのイベント、夏の特別企画など一部の例外を除き、チェコにおける蒸気機関車の運行1981年に完全に終了しました。但しその頃にはターボルとベヒニェを結ぶ南ボヘミア鉄道で、既に約80年間、チェコ初の電化路線が機能していました。その運行は1903年6月に開始されていたのです。

狭軌線 - 旅の薦め 

チェコでは鉄道全線が、標準に合致するよう造られたわけではありません。そのため国内には今日にいたるまで狭軌線がいくつか残されています。ここでは特に夏の観光シーズンに、蒸気機関車で昔さながらの列車体験 - ある人にとっては全く新しい体験、またある人にとっては子供の頃へのタイムスリップ  - を楽しむことができます。中でも南ボヘミアインドジフーフ・フラデツ近郊にある狭軌線は、全長数十kmで、最も長いものに属しています。沿線の、おとぎの国から出てきたような小さな駅は、その大半が人里離れた森や林の中に点在しており、旅をよりロマンチックなものにしてくれます。その中でも最も美しい駅とされているのが、森の中にあるカプロウン駅。駅からはハイキング、そしてサイクリングのコース網が縦横に広がって、周辺の観光スポットを結んでいます。また駅の中には構内で宿泊できるところもありますし、また列車には自転車を乗せることが可能なものもあります。


 

チェコ鉄道豆知識 

チェコには「ショトウシュ」と呼ばれる鉄道ファンが数多く存在します。こうしたファンは、愛好会に属し、鉄道に関するあらゆる情報の収集に勤しんでいます。うち撮り鉄は、注目に値するものはなんでも写真に納めることを使命にしていますが、こうした「注目すべきもの」は、チェコでは数えきれないほど見出すことができます。チェコの鉄道には、トンネルが160、鉄橋は何と7,000もあるのです。うちチェコ最長の鉄橋は、プラハネグレッリ橋で、上述のマサリク駅から住宅街を抜けて、ヴルタヴァ川の対岸へと続いています。その全長は1,100 mに及んでいます。一方チェコで最も高い所に位置する鉄道駅は、シュマヴァ山地クボヴァ・フチ駅(995 m)です。この路線の始点はストラコニツェですが、そこまでプラハからやはり列車で快適な旅を楽しむことができます。ストラコニツェからクボヴァ・フチを経てヴァラリまで続くこの線は、人気路線で、観光用臨時列車も運行しています。スイスのようなパノラマ列車はありませんが、ここではゆっくりと進む列車の窓からシュマヴァの起伏に富んだ景色をじっくりと堪能することができます。


美しい駅を求めて 

チェコで鉄道の建設が進み、発展を遂げたのは19世紀の半ばから20世紀半ばにかけての時期でした。そのため現在国内に存在する駅は全て歴史的建造物といえ、今日21世紀における時代の要求に即するよう、改築や変更が進められています。こうした駅の1つが、モラヴィアの中心都市・ブルノの中央駅で、最近実施された改築の成功例に挙げられています。ブルノ中央駅は、現在の外観が整備されたのは1905年頃で、チェコで最古の駅の1つに数えられていますが、現在は改築により一新され、構内中が清潔感に溢れています。一方プラハ本駅も、大変興味深い変遷を遂げています。今日の駅舎は1909年に建てられた初期アールヌーヴォー様式の建物ですが、1970年代に地階ホールが追加され、駅全体が拡張されました。歴史的なアールヌーヴォーと当時モダンとされていたブルータリズムの融合は非常におもしろく、現在もここにはブルータリズムの外壁や復元された当時の電灯が見られます。またホームを覆う屋根は鉄鋼製の梁で支えられていますが、この部分は最近、蒸気機関車の煤を取り除く作業がなされたところです。

鉄道ファン必見の博物館 

中央ボヘミア・ラコヴニーク市近郊の町、ルジュナーにあるチェコ鉄道博物館は、この種のものとしてはチェコ最大の規模を誇っています。その敷地内には軌間800 mmの狭軌線路が敷かれており、見学者は実際に乗車体験をすることができます。ここにはピカピカに磨かれた蒸気機関車が最も古いものから比較的新しいものまで並んで展示されているほか、数々の旅客・貨物列車の車両、信号・安全装置、既に使用されていない特殊な道具、列車の模型など、鉄道史を語る様々な品が置かれています。またここには展示品を修理、復元する鉄道作業場もあります。またプラハでも、レトナー地区の国立技術博物館内で、皇帝フランツ・ヨーゼフ一世のサロン車両のほか、2台の蒸気機関車などを見ることができます。