チェコは、そのガラス製造の伝統でも良く知られています。チェコ・クリスタル、ボヘミアン・カットグラスを知らない者はいないでしょう。こうしたガラス作りの伝統を今に伝える、モダンなガラス・メーカーの1つが、北ボヘミアの小さな町、ノヴィー・ボルを拠点とするラスヴィット社です。ラスヴィットでは、完璧な職人芸、現代テクノロジー、そしてインスピレーションに富むデザインとが融合、昇華されています。同社は主として、オペラ座、地下鉄駅、豪華客船などの照明、ready-to-shineコレクション、そして建築用ガラスの製造を行っています。
世界のラスヴィット
ラスヴィット社は、ガラス作り伝統で知られる北ボヘミアの地に、2007年に設立されました。創設者は、リベレツの、ガラス作りの技術を6代に渡って伝え続けてきた家系に属する人物です。その曾祖母の姓はスヴァロフスカーで、有名なガラス・ブランド、スワロフスキーを創設した一族の出身でした。現在ラスヴィットは数多くの世界的デザイナーと提携する一方で、将来を嘱望される若手クリエーターの養成にも力を入れています。同社が担当した照明は、2,000軒以上のホテル、私邸のほか、豪華客船の内部、その他世界中の公共・私的空間で使用されています。
自転車レースに関心のある方は、ツール・ド・フランスのトロフィーをご覧になったことがあるでしょう。このガラス製の優勝杯にもラスヴィットが関係していることを、貴方はご存知でしたか? すでに何年にも渡って、ツール・ド・フランスの優勝者には、このチェコのガラス・メーカー制作のトロフィーが授与されているのです。
会社ビルそのものがガラスの芸術品
ラスヴィットの本社は、ノヴィー・ボルの広場に面した、ユニークな建物改築空間に位置しています。ここに立つ建物の中には入念に修築されたものもあれば、ラスヴィット社の「黒い家」そして「ガラスの家」のように、新たに建てられたものもあります。透明なガラス製タイルで覆われた、2階建ての「ガラスの家」の中には大きな展示ホールがあり、そこではラスヴィット社の製品が細部に至るまで紹介されています。日没後は建物全体が輝きますが、その姿はこの地方のガラス作りの伝統と誇りを顕示するかのようです。一方黒いセメント瓦で覆われた「黒い家」は、ガラスの組立試験用に建てられたものです。こうしたノヴィー・ボルのラスヴィット本社の改築・完成が評価され、その設計者は2020年に国際審査員によりチェコ建築大賞を受賞したほか、Dezeenアワード2020では世界のベスト・オフィスビルに選ばれています。プラハ、ドバイ、そしてバンコクをも照らすラスヴィット
ラスヴィットが創造する光の世界は、観る者を常に魅了します。プラハでは例えばフロレンティヌムあるいは国立劇場近くのクアドリオといったオフィスビルの玄関ホールで目にすることができます。この北ボヘミアの1企業の作品が、今や世界中で見られることを、私達は大変誇りに思っております。その最初の外国プロジェクトは、2009年に実現したドバイ地下鉄の巨大なガラス照明でした。またパリでは、あるホテルのロビーに設えられた、800枚のガラス製の葉から成る、高さ9メートルのオブジェ「ダンシング・リーヴス」が話題を呼びました。更にドバイのオペラ座の玄関ホールには、ハンドメードのガラスパールで作られた重さ5トンの彫像が見られます。またバンコクのコンサートホール「プリンス・マヒドル・ホール」の「ニューロン(神経細胞)」と名付けられたオブジェは、音楽とリズムに光と色が反応し、音楽の調べをビジュアル体験に変える画期的な試みとなっています。