プラハの国立劇場
プラハの国立劇場と銘打った建物はいくつかあり、それぞれが異なるレパートリー、そして個々に特徴的な雰囲気を持っています。ここでは公演以外の姿、舞台裏もご覧になりたいという方のために、
個人見学あるいは
団体見学ツアーを提供しています。週末見学ツアーは事前予約が必要で、英語ガイドも予約可能となっています。
プラハ国立歌劇場(Státní opera Praha)
ヴァーツラフ広場近くに位置するプラハ
プラハ国立歌劇場の壮麗な建物は、近年大規模な修築を経て、1888年の創立当初の姿、輝きを再び取り戻しました。ここでは金の要素が惜しみなく散りばめられ、彫刻装飾、贅沢なタペストリーが19世紀末~20世紀初頭のスタイルで豊富に施されています。こうしたネオロココ式の内装の中でも特に注目に値するのが、
黄金のシャンデリアの隣に描かれている天井画と壁画です。一方国立オペラ座の代表的レパートリーとしては、
「ラ・ボエーム」、「椿姫」、「さまよえるオランダ人」、「トスカ」などが挙げられます。2022年にはこれに加えて
「マクベス」、「蝶々夫人」、「リゴレット」、そして
バレエ「白鳥の湖」が上演されます。いずれも皆様の期待を決して裏切らない古典作品です。オペラは原語、英語字幕付きでお届けいたします。
国民劇場(Národní divadlo)
プラハ中心部、ヴルタヴァ河岸に立つ
国民劇場の堂々たる建物は、1883年に完成したものですが、当時はプラハでドイツ語ではなく、チェコ語で上演がなされる数少ない劇場の一つとして注目を集めました。壮麗な建物の内部は、絵画、壁画からブロンズの胸像、彫像、半円形の絵画、寓意画などに至るまで様々な
19世紀を代表する芸術家が手掛けた作品で飾られています。ここで1つ、知る人ぞ知る豆知識をご披露しましょう。ホールを見上げると天井に8人のムーサ(芸術の女神)を描いた寓意画がご覧いただけます。これは天井画のように見えますが、実は
キャンバスに描かれた油絵で、建物完成後天井にはめ込まれたものなのです。国立劇場旧館では、通常チェコ語の演劇作品が上演されていますが、中には英語の字幕付きのものもあります。また
「ルサルカ」、「セビリアの理髪師」、「ジャコバン党員」、「トゥーランドット」、
「カルメン」などの
有名オペラ作品もここでご鑑賞いただけるほか、国立劇場
バレエ団の公演が行われることもあります。
エステート劇場(Stavovské divadlo)
エステート劇場は、1783年に新古典主義様式で建てられたものですが、現在もほぼ創設当時の状態で残されています。この劇場は特に
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと非常に縁の深いものとして知られています。1787年1月にモーツァルトが「フィガロの結婚」を指揮し、同年秋にモーツァルトがプラハに捧げたオペラ作品
「ドン・ジョバンニ」の世界初演が行われた場所がまさにここだったのです。またチェコ人にとっては、1834年という年も非常に重要な意味を持っています。この年、ここでは「フィドロヴァチカ」の初演が行われたのですが、そこで初めて、今日チェコの国歌となっている「我が祖国はどこに」が演奏されたのです。2022年のシーズンには、有名な
モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」、「魔笛」、「ドン・ジョバンニ」、「フィガロの結婚」の公演が予定されています。
プラハのルドフィヌム(Rudolfinum)
ルドルフィヌムは、国立劇場とほぼ同時期に創設されたものです。この有名な
プラハの音楽堂は、1896年にここでアントニーン・ドヴォジャークの指揮で初めて演奏した
チェコ・フィルハーモニーの本拠地となっています。建物の中には4つのコンサートホールがありますが、中でも
最大のドヴォジャーク・ホールは音響の素晴らしさ、そして中央ヨーロッパ最大のパイプオルガンが置かれていることでも知られています。ここではまた、通常のコンサートのほか、毎年
プラハの春音楽祭も開催されており、更に
ギャラリー・ルドルフィヌムでは現代芸術の展覧会も開かれています。一方ルドルフィヌムの舞台裏、その歴史と現在についてもっと知りたいという方には、チェコ・フィルハーモニーのスタッフがご案内する
ルドルフィヌム巡礼がお薦め。日によってはツアーの一環として屋根にのぼれるときもあり、プラハを一望する素晴らしい景色をお楽しみいただけます。事前に予約すれば、英語解説付きのツアーに参加することも可能です(平日のみ)。
プラハの市民会館(Obecní dům)
プラハ中心部のかつて宮廷があった場所、現在の
共和国広場に、20世紀初頭に建てられた珠玉の
アールヌーヴォー様式の建物・
市民会館。その建築には、
ミコラーシュ・アレシュ、マックス・シュヴァビンスキー、フランチシェク・ジェニーシェク、そしてアルフォンス・ムハ(ミュシャ)など当時を代表する芸術家が参与しました。現在も建物内部では
当時の鏡、アールヌーヴォー式のカーテンやタペストリー、ステンドグラスなどを目にすることができます。館内最大のスメタナ・ホールは
クラシック音楽のコンサート会場となっているほか、ここでは
舞踏会や
展覧会も行われています。現在は「
iMucha」プロジェクトの一環として、世界的に知られるムハの作品コレクションが展示されています。市民会館では英語
ガイド付きツアーも定期的に行われていますので、機会がありましたら是非ご参加ください。
ブルノのマヘン劇場(Mahenovo divadlo)
19世紀末は、数多くの劇場やコンサートホールの建設が進んだ時代でした。
モラヴィアの
ブルノで、芸術とムーサ共有の場としての劇場の建設が決定したのもこの頃です。観客席の天井には寓意画が描かれましたが、これは悲劇、舞踏、抒情詩、喜劇、歌、そして音楽を表しています。1882年に完成した、今日
マヘン劇場と呼ばれるこの劇場は、
ヨーロッパで最初に全照明に電気が使用された劇場としても知られています。当時ブルノの町にはまだ電気が引かれていなかったため、劇場の需要のみのためにわざわざ小さな発電所が建設されました。電気照明の設計者、
トーマス・アルバ・エジソンが、自らが遠方から指揮をとって完成させた作品を一目見ようとブルノの地を訪れたのは、それから25年後のことでした。エジソンが手掛けた配線システムは、その一部が劇場のロビーに展示されています。このためマーヘン劇場は現在
技術記念物に指定されています。今日この劇場はオペラ、バレエの公演を行っており、今年は
「アイーダ」、「カルミナ・ブラーナ」、「エヴゲーニイ・オネーギン」などのオペラ作品をお届けする予定です。
オストラヴァのアントニーン・ドヴォジャーク劇場(Divadlo Antonína Dvořáka)
今日の
アントニーン・ドヴォジャーク劇場は、1907年にオープン、以来急速な発展段階にあったこの
モラヴィアの工業の中心地に、演劇、コンサートなどの文化を届けてきました。ネオバロック式の建物の設計を担当したのはウィーンの建築家アレクサンダー・グラフで、装飾には数多くのチェコ、そしてウィーンの芸術家が参与しました。建物は、外観こそ19世紀のクラシカルな様相を呈していますが、その建設には現代的な手法が用いられています。周辺の町の劇場と異なり、鉄筋コンクリートの梁と横材が使用されていたのです。現在この劇場はモラヴィア=シレジア国立劇場の
オペラ、演劇、ミュージカル、バレエ団の本拠地となっています。今年は演劇のほか、
「ナブッコ」、「椿姫」、「ルサルカ」などのオペラ作品の上演が予定されています。