必見建築物5選
建築は、周囲の世界に対する視点の変化、あるいは新素材、建築メソッドなどの発展により常に進歩しつつある芸術です。今回はプラハ市外に存在する必見の建物を5軒ご紹介いたしますが、その中にはグリーンフィールドに土台から建てられたものもあれば、既存の建物に改築を加えることにより、新たな息吹が吹き込まれた例もあります。貴方も是非、建築の旅にお出かけください。決して後悔しないこと請け合いです。

ノヴィー・ボルのガラス張りの家「ラスヴィト」

北ボヘミアの町、ノヴィー・ボルの広場には、1年ほど前に1軒の非常にユニークな建物が登場しました。これはガラス・メーカー「ラスヴィト」の本社ビルで、同社は広場に面して立つ、18世紀に建てられた2軒のログハウスとその間の空地を利用して、これをその本拠地とすることにしたのです。設計者はこの地方特有の伝統的スレート屋根にインスピレーションを得て、空地の新築建物を特殊なガラス製板で覆いかぶせました。ノヴィー・ボルで一泊される機会がありましたら、この珠玉の建築作品が、夜のとばりの中鮮やかに輝く姿も是非ご覧ください。単なる会社ビルに過ぎないのは事実としても、誰もが一度は見る価値のある建物です。この建物は、2019年、建築部門で国際的に最も権威ある賞に数えられるDezeenアワードにノミネートされ、さらに2020年には設計者であるイジー・オポチェンスキーとシュチェパーン・ヴァロウフが、ラスヴィト本社ビルの改築・完成によりチェコ建築大賞を受賞しています。更にこのガラスの建物は、2020年のチェコの「ビルディング・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれました。ノヴィー・ボルの町ではまた、かつてのガラスづくりの伝統が復活しつつありますが、こうした伝統の面影は、当地のガラス博物館、あるいは町の中に点在するガラス工場に見出すことができます。

ヤブロネツ・ナド・ニソウのユニークなガラス製クリスタル 

北ボヘミアのヤブロネツ・ナド・ニソウは、ガラスのオーナメント、アクセサリーの生産で数百年の伝統を誇る町。ここにはもちろん、この芸術に捧げられた博物館、ガラスとアクセサリーの博物館がありますが、この建物には近年クリスタル形をしたガラス張りの空間が加えられ、展示ホールが拡張されました。拡張部分にはガラス製のクリスマス・オーナメントが展示される予定です。アールヌーヴォー様式の本館から飛び出したカット・ガラスの様相を呈しているこの建物のベースはコンクリートの天井とコア部分で、そこから伸びる鉄骨構造が全480m2のガラス板を支えています。これらは243枚の不定形三重ガラスで、1枚1枚が異なる形をしています。貴方も是非一度実際にその目でご覧になってみてください。

ズリーンのトマーシュ・バチャ記念館 

ズリーン市は東モラヴィアに位置しています。この町は20世紀前半に急激な発展を遂げましたが、その立役者となったのが靴メーカー「バチャ」です。今日ズリーンは欧州のシリコンバレーと呼ばれるまでに様変わりしています。バチャの時代に建てられた建築物の中でも、特に注目に値するのは1933年に建てられたトマーシュ・バチャ記念館です。近年改築されたこの建物は、建築家フランチシェック・リーディエ・ガフラの作品の中でも最も印象的なものとされており、ズリーン機能主義建築の最高傑作に属するものです。この建物はゴシック最盛期の建築物のパラフレーズとも言われていますが、これは控え壁とステンドグラスとから成るゴシック式大聖堂と同様、この建物が鉄筋コンクリートとガラスのみで成り立っているためです。近年大規模な改築を経て、記念館は現在再びその本来の目的、チェコスロヴァキアの事業家・バチャの生涯と業績を紹介する役割を果たしています。記念館内部で最も目を引く展示物は、航空機ユンカース F.13の模型ですが、これはトマーシュ・バチャが1932年に搭乗し、その事故で亡くなった旅客機です。

コビリー葡萄園を望む小道 

モラヴィアのコビリーという村にあるコビリーの丘には、2018年に建てられたユニークな展望台があります。設計者によると、螺旋廊下状のこの展望台は自然のサイクルを表現しており、その中に深い象徴性を秘めています。一番高い場所で7.5 mあるこの展望台からは、周囲に広がる葡萄園、そしてモラヴィア地方の緩慢な起伏に富んだ風景を楽しみ、そのゲニウス・ロキを体感することができます。

サゾヴィツェの聖ヴァーツラフ教会 

今回もまたモラヴィアです。先ほどご紹介したズリーンまで戻り、その近くにあるサゾヴィツェという村を訪ねてみましょう。ここには3年前に聖ヴァーツラフ教会が建てられましたが、この建物は2017年世界ベスト建築の1つに選ばれています。建築家マレク・ヤン・シュチェパーンの作品であるこの教会は、専門家からもまた一般からも外観・内装の純粋さが高く評価されています。ここでは誰もが、いわばビジュアル・スモッグがなく、神経を集中することのできる、ピュアな空間を見出すことができ、この純粋さとシンプルさが、訪れる者に静けさと平穏な心をもたらすのです。内部には壁の刻み目から光が差し込みますが、教会内部からこれを囲む周辺の様子は見えないため、これが心の平穏、そして集中度を更に高めてくれます。教会は円柱形を呈しており、千年以上前に建てられたロマネスク式のロトゥンダの伝統を継承しています。