モラフスキー・クルムロフ城の「スラヴ叙事詩」
アールヌーヴォー絵画の巨匠、アルフォンス・ムハ(ミュシャ)は、数々の作品を残していますが、「スラヴ叙事詩」と名付けられた、巨大なキャンパスに描かれたこの一連の絵画は、他の作品とはあらゆる意味で一線を画していました。現在「スラヴ叙事詩」は元の展示会場である南モラヴィアのモラフスキー・クルムロフ城に再び戻って来たため、2021年から2026年までの期間ここで誰もが、この作品全点を一カ所で見ることが可能となっています。しかもキャンパス展示空間が修築されたため、これによりアルフォンス・ムハ一大傑作の美を余すところなくご鑑賞いただけるようになりました。「スラヴ叙事詩」は、ムハが中央ボヘミアのズビロフ城にて、1910年から18年間かけて描き上げた作品です。一連のキャンパスのうち7点は、8 x 6 メートルのサイズを有しています。

スラヴの歴史叙事詩 

ムハスラヴ人の包括的歴史を捉えるために、この作品を手掛けました。しかしながら一連キャンパスの半数以上は、チェコ国民とその歴史、宗教、そして文化に捧げられています。現在個々のキャンパスは、歴史的な流れに沿った形で並べられているため、まずは祖地におけるスラヴ人に始まり、その後ヤン・フス、あるいはヤン・アモス・コメンスキーなどが登場、そしてスラヴ歴史の神格化へと続いていきます。

城の改築 

「スラヴ叙事詩」は、以前もこの南モラヴィアの城に、一時的に展示されていたことがありましたが、その後城の状態、環境条件が絵画の保存に不適当であると判断されたため、キャンパス全点が他の場所に移されました。現在城は必要最低限の改築を経て、再び「スラヴ叙事詩」を迎え入れています。その際展示ホール全体が、強い日差しによる絵画の劣化・損傷を防ぐため、太陽光が遮断されるよう改装されました。「スラヴ叙事詩」の個々の絵の大きさは、数メートルに及んでいますが、これらはその全体を1ヵ所でまず鑑賞するのがベター。その後そこから1つ1つ場面が浮かび上がってきます。こうした鑑賞方法にも、城は理想的な環境を提供しています。このモラフスキー・クルムロフに「スラヴ叙事詩」がとどまるのは2026年までとなっています。それまでに、この作品をプラハに寄贈した作者、アルフォンス・ムハの要望に従い、プラハにこの作品展示に相応しい場所が造られる予定です。その条件は、「スラヴ叙事詩」用に特別な美術館を設立することとなっていますが、これまでこの条件が満たされたことはありませんでした。