コテージでロマンチックな休日を -チェコの田舎体験
古色蒼然とした田舎の家、森の傍、あるいは丘の上に立つログハウス… これが、チェコ人が休日に好んで訪れる場所のイメージです。現在新型コロナ危機により、こうした家族向けコテージ、別荘への回帰現象が起こっていますが、その理由は都市部の感染リスクからできるだけ遠ざかりたいとの願望だけではないでしょう。ロマンチックな田舎の生活は、チェコ人のみならず、自然への回帰を求める世界中の人々を魅了しつつあります。

19世紀末、チェコの人々はその固有の文化、そして歴史に強い関心を抱くようになりました。1881年にはチェコ・ツーリスト・クラブが結成され、ほどなく何千人もの会員、支持者を得ます。会員は周辺のハイキングや、鉄道が発達してからは更に遠くの地域へのツアーも計画し、実行してきました。チェコのコミュニティーにとって、田舎への興味は民族のアイデンティティ、そして民間伝承、そして民俗建築などへの関心と深く結びついていたのです。コテージや別荘の利用は、特に第二次世界大戦後急激に発展しました。当時若者が大量に都市部に流出し、農村部の人口高齢化が進みました。農家その他の農村部の家屋そのものは、状態の悪いものも数多くありましたが、一方で若者は休日を子供達と自然の中で気持ちよく過ごすことのできる場所を求めていました。そこで彼らはこうした家屋を修築し、レクリエーションの場へと造り変えていったのです。

日曜大工世代 

1948年以降、チェコスロヴァキアではその共産政権下、国外への旅行が極端に制限されていたため、市民の大半にとって、休暇行き先にそれほど選択肢がないのが現実でした。そこで人々は、田舎のコテージや別荘をセカンドホームとして確立させていったのです。その際、建築材が不足していたため、人々は入手可能な様々な材料を用いて柔軟に対応することを余儀なくされました。そんな中器用な日曜大工たちは、次々と夢のコテージを建てていきましたが、中には鉄道車両やビール醸造用の樽を利用して建てたというDIYのつわものもありました。1989年11月には、政治体制が大きく変わり、チェコスロヴァキアは再び世界にその門戸を開きます。以後数年は、自由に国境を出入りできるという陶酔感と外国への関心から、国外で休暇を過ごすのがトレンドとなっていましたが、近年再び国内のコテージや別荘を利用した休暇の過ごし方が見直されてきつつあります。但し、田舎での休暇の過ごし方も、今と昔ではかなり違異なりますが。

セカンドホーム 

 インターネット普及により、チェコの人々の多くはコテージや別荘を、レクリエーションや休養の場のみならず、仕事場としても利用できる多目的の建物へと造り変えていきました。チェコは、欧州でスウェーデンに次いでコテージの密度が高い国に属しており、レクリエーション用不動産を有している国民の数は、人口比36%となっています。リノベされたコテージや別荘は、外国人観光客の間でも人気を呼びつつあります。森の中のログハウスを借り切って、静かでロマンチックな週末を過ごすこともできますし、レクリエーションのみならず、仕事の必需品も揃った快適な別荘を、家族でレンタルすることも可能です。ハイキングも心行くまでお楽しみいただけることでしょう。何しろチェコは総計4万キロものハイキング道が整備されている、世界で最もハイキングコースの密度が高い国の一つに数えられているのですから。

農村の伝統 

 チェコのコテージや別荘の魅力は、その外観だけではありません。個々の家族の伝統もその大切な要素となっています。建物と設備は現代の生活様式に適合されてはいるものの、農村的特徴はそのまま残されているのです。その典型的な例が、トゥルトノフ地方ルティニェ村にある、1857年に建てられたシマーネク家のピンクの別荘です。正面外壁に美しい装飾が施されたこの2階建ての建物は、内装が田舎風の木製家具で統一されています。ここでは最大24人、宿泊可能となっています。キッチンには電化製品も備え付けられていますが、一方で昔ながらの薪ストーブ兼オーブンもあり、その周りで団らんできるようになっています。またポーチにはバーベキュー用のスペースもあります。よりアクティブな休暇がお望みという方のためには、地階にプールが用意されています。これは5月から9月の間ご利用いただける室内温水プールです。アウトドア派にはもちろん、周辺の観光スポットをお楽しみいただけます。例えば健脚な方にはアドルシュパフ奇岩群、そして歴史ファンにはククスがお勧めです。後者は空想家、シュポルク伯爵が創設した壮大なバロック地区です。伯爵はこの地に、17世紀末に温泉療養所を建てさせましたが、そこには欧州至る所から貴族が訪れました。バロック地区はまた、有名な彫刻家、マティアーシュ・ベルナルド・ブラウンの美しい彫刻装飾、特に悪徳と美徳を表現したユニークな寓意的作品の存在でも知られています。

アクティブな休養 

フクヴァルディ町近郊ホルニー・スクレノフ村の木造ログハウスでは、伝統とモダンな生活様式の絶妙な融合をご体験いただけます。ここでは木製のテーブルで、田舎風キッチンの窓から1500 m2の広大な庭園を眺めながら楽しむ朝のコーヒーが定番。その後適度な運動をなさりたいという方は、ここから100 mほどのところにある18ホールのゴルフ場を是非お試しください。またログハウス内にあるプール付きサウナもご利用いただけます。お子様向けには、おもちゃ満載の大遊戯室もありますし、庭にはツリーハウスも用意されています。エクスカーション先としては、フクヴァルディ城がイチ押し。これは13世紀に建設が開始された古城で、現在その城跡が一般開放されており、敷地内の展望台から周囲の素晴らしい景色を楽しむことができます。フクヴァルディはまた、世界的に有名な作曲家、レオシュ・ヤナーチェックの出身地としても知られています。その生家は現在ヤナーチェック記念館となっており、周辺のネイチャー・トレイルなど、世界中を魅了したヤナーチェック作品にインスピレーションを与えた様々な場所が紹介されています。

ワイン地方 

ブジェツラフ地方ニェムチチキ村のコテージでも、家族の伝統が重んじされています。この家は、オーナーがかつて夏休みを過ごしていたお祖母さんの残した家を改築したもので、ここでは誰もが子供時代にタイムスリップしたような気分が味わえます。コテージは12人宿泊可能で、タイルのストーブの隣、中庭、ポーチなどなど、各人がお好みに合わせて、自分だけのお気に入りの場所を見つけられるようになっています。またコテージ周辺には、ハイキング、エクスカーションに最適な場所が数多くありますが、中でも特にパーラヴァ自然保護区に縦横する「ワイン・ロード」は一番のお勧め。自転車をレンタルして、是非サイクリングをお楽しみください。またワイン造りの中心地、ミクロフまで足を延ばすのも良いでしょう。ミクロフ城内には、ワイン造りの歴史、そして皇帝ナポレオンなど、かつてこの美しい町を訪れた数々の著名人に関する常設展示もご覧いただけます。さらにニェムチチキ村近く、パヴロフ村には地下考古学博物館もあります、ここでは、25000~27000年前の集落のほか、旧石器時代の人々の生活の様子を示す工芸品、道具、埋葬儀礼、あるいはパヴロフ村周辺にかつて生息していたマンモスの骨などを見学することができます。